社会とサブカル コラムノート

社会哲学と生命倫理を軸に、社会批評とサブカルチャーコラムをただ思うがままに書きたいです。

『図書館戦争』シリーズを読み、表現の自由について考える

 私が『図書館戦争』シリーズで一番印象が残ったのは、『図書館戦争』の142ページ、柴崎のセリフより『「結局のところ何かの性にしておちつきたいのよね、こういうのって。犯人はあの本のせいで歪んだ、この映画に影響されて犯行に及んだって。理由付けして原因を取り除いた子どもを監督する側は安心できるって仕組みね。気持ちは分からないでもないけど」』という部分である。
たとえば「クレヨンしんちゃん」を見たら、子どもが下品な行動や言動を真似したらどうするのかという批判する人もいる。ある事件で漫画の影響で犯行に及んだというニュースを聞いたことがある。確かに子供の好奇心で真似をする人、ある作品に影響を受けてそのまねごとをした人もいるだろう。だが、それを何かと責任を物に押し付け転嫁するのは如何なものか。親は子どもに対して物事の分別を教えることが使命であり、またある作品を参考にした人も、犯罪行為に及んだのは、本人の意思行動であり、作品を知っている万人が当てはまらない。このように、事件に影響がある作品や教育上良くない作品を批難しているのは、単なる責任転嫁であり、それらに及んだのは自己責任と考える私の意見と一致していたので、この一文を選んだ。
 もし、表現の自由に規制がかけられている世界を描いたのが「図書館戦争」シリーズである。仮の世界だが表現の自由に対していろいろ考えさせられた。だが現実社会の日本と比較して、いろいろと比較すると疑問点が残る点がある。
 現実の世界では、日本国憲法の第21条の2項にて、検閲を禁止している。日本にも、検閲についての裁判もある。例えば、教科書検定問題である。教科書「新日本史」が検定不合格処分に対して、その取り消しの裁判が行った。結果は、制度に違憲とされなかったが、思想内容の審査に及んでいる点では違憲とした。
 1979年に、北海道都知事選の立候補者に対する批判、攻撃した雑誌記事が発売前に名誉棄損として、裁判所に差し止めされた。これに対して、裁判所の見解は、仮処分による事前差し止めは、検閲に当たらないとした。内容の信ぴょう性や公益性もなく、被害者の回復困難があるとして、例外的に適応された。ただし、一般にその批判内容が公共性の利害に関し、詩人の名誉棄損より社会的価値があれば、許されないとした。
 一方、「図書館戦争」シリーズは、「メディア良化法」があり、「メディア良化委員会」という組織が存在する。流通前の媒体を取り締まってはいけないとされているが、公序良俗を満たしていない媒体は、狩られてしまう。一般流通している本を回収し、取り除くというのは、あきらかに表現の自由を侵害しているとしか言えない。
 ここで現実世界では、表現に関して、問題がある場合、憲法や様々法律にのっとり裁判所が判断する。もちろん、司法の判断がすべて正しいとは限らないし、現実に疑問に感じる判決を下すことある。しかし、司法というシステムの中で解決をしていくというのは、公正なことである。だが「図書館戦争」シリーズでは、憲法や法律、裁判所より上に、「メディア良化法」や「メディア良化委員会」があり、それらによって、強い力によって、表現の自由を規制していくことが変なところである。国の在り方を示した憲法や裁判所があっても、法律や国家組織によって、司法の役目を果たしていないのは法治国家ではない。また「メディア良化員会」に対抗する同じ力をもった組織がなく、その表現が、どのような人に利害があり、社会に与える影響などがあるのかということ議論にし、規制するか否かということを決めるのが一つの機関であり民主主義的でなく、公平、客観的でない一方的なものでしかないというのが問題だ。

図書館戦争」シリーズには、現実世界と合わせて考えてみると、多くの疑問点や矛盾点がある。もちろん非現実的で極端な世界観であるからこそ、現実社会の欠点や問題点が浮き彫りになったりする。あるいは、未来や政策を考える上で予想する材料になる。表現は時と場合によっては、人を傷つけることや人や社会に強い影響を及ぼす。表現する側もそれらの配慮はできる範囲で行わなければならない。だが、一番大事なのは、表現を受け取る側がリテラシーを持ち、情報をいかに選別し、受けと入れるかということが一番大事なことであると考える。「図書館戦争」は、表現の自由を考えさせられたが、批判点が甘く、今回指摘しきれない問題も多くある。今後こんな指摘しきれなかった点について、自主的に学び、表現の時湯について考えていきたいと思う。                        

*大学1年次の「メディア・リテラシー」提出レポートから転載

参考文献:「わかりやすい憲法」 文化書房博分社 2008年4月15日 編者 緒方章宏  筆者 穐山守夫、市川直子、小林康一、清水雅彦 
稲積重幸、松井千秋、山崎英壽 
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