社会とサブカル コラムノート

社会哲学と生命倫理を軸に、社会批評とサブカルチャーコラムをただ思うがままに書きたいです。

貧困問題の報道に関する雑感

 NHKニュースで、8月18日に子供の貧困の現状を訴えるイベントが横浜市で開催についての記事化された。
その中に出てくる専門学校への進学をあきらめた女子高生をめぐり炎上している。母子家庭で、彼女自身もアルバイトして生計を立てている一方で2万円の画材道具をめぐり、NHKはねつ造したとか、彼女は貧困ではないとか炎上しているようだ。

子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える | NHKニュース
子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える - YouTube

 NHKニュースWEBの文章には以下の指摘がされている。

子どもの貧困率 最悪に

厚生労働省によりますと、貧困状態にある18歳未満の子どもの割合を示した「子どもの貧困率」は、平成24年時点の推計で子ども6人に1人の割合に上り、調査をはじめた昭和60年以降、最悪となっています。
なかでも、母子家庭など「一人親世帯」では半数以上が貧困状態で、先進国の中でも最悪の水準です。こうした子どもの貧困は、進路にも深刻な影響を及ぼしています。厚生労働省が平成23年度に行った調査では、一人親世帯での大学や専門学校などへの進学率は40%余りで、ことし5月時点での全世帯の進学率と比べて、およそ30ポイント低くなっています。また、文部科学省がおととし行った調査では大学や短大を「経済的理由」で中退した若者は1万6181人に上り、全体の20.4%を占めて最も多くなっていて、前回5年前の調査より6.4ポイント増え、貧困が子どもたちの将来に大きな影を落としています。
さらに子どもたちが経済的な理由で学習の機会を失うことで、将来十分な収入が得られず親の貧困が子どもにも引き継がれる「貧困の連鎖」が広がっています。

引用:子供の貧困 学生たちみずからが現状訴える NHK NEWS WEB 2016年8月18日 

 NHKが指摘しているように、統計的には子供の貧困、そして一人親世帯が貧困状態であり、仮に進学しても経済的な理由によって退学する者が存在している。こうした統計的な数値とは別に、家族の問題で自己責任(親が浪費癖による借金、就労意欲がなく収入が少ないなどによる貧困)あるいは当事者の甘え(自分はかわいそうな存在ですべては社会が悪い)といったことから生じる感情あるいは身近にいるどうしょうもない理由で貧困になった人の存在を思い浮かべて、人々が貧困の問題に嫌悪感が生じ、再分配や政策的な解決に向かっていかないのが現実である。

可視化される貧困と解決されない現実
 貧困をめぐる問題は多くの書籍や雑誌、テレビなどで可視化されてきた。鈴木大介『最貧困女子』(幻冬舎新書)、NHK「女性の貧困」取材班『女性たちの貧困 “新たな連鎖"の衝撃』(幻冬舎)、水島宏明『ネットカフェ難民と貧困ニッポン (日テレノンフィクション 1) (日テレBOOKS―日テレノンフィクション)』など、貧困に置けれた当事者の生々しい姿を描写してきた。
今回のNHKニュースも貧困状態にある女子高生を取材し、その声を放送した。ただ統計的な数値を報道する、あるいは会議の内容を紹介するだけでなく、どうしても貧困状態にある当事者の声を放送することで、より問題をリアルかつ深刻さを伝える上で重要だと思う。
 一方で多くの情報が氾濫し、ジャーナリストやフリーライターあるいはテレビ局が貧困状態にある当事者の描写が増える中、なかなか再分配や政策に結び付かず、政治を動かすに至っていない。貧困当事者を描写は、貧困問題を考える上で重要な資料を提供している。その一方でやはり取材して描写するだけであり、法律や経済学などの政策方面に弱く、ジャーナリズムやライター、そして一部の社会科学者たちの力不足は否めない。「~べき」という議論が先行していて、現実的な財源でどのような配分すれば、最大多数の最大幸福が実現できるのかを示すことができていない。
 また当事者の描写が増える中で、よりひどい貧困状態を求め、その当事者が本当に貧困であるのかという疑いの目で見られてしまう。今回のNHKで取り上げれた女子高生について、貧困な状態なのに、高級な画材道具があるのか、果たして貧困状態といえるのかという疑いの目で見られてしまった。確かに探せばもっと貧困状態の人がいるかもしれないが、その当事者の声はあくまで個別性に過ぎず、全体的な問題である貧困問題や教育格差、貧困の世帯間連鎖の問題などに向き合わなけれならない。

おわりに
 今回のNHKの報道は不用意であるが、当事者の声はあくまでも個別性に過ぎず、全体的な問題である貧困の問題、子どもが自ら望む将来を経済的な理由で挑戦できない問題を忘れてはいけない。

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